東京高等裁判所 昭和44年(ネ)1179号 判決
本件は、控訴人が有限会社千葉タクシーの六〇〇口の持分を有する社員であるところ、同会社の社員総会の決議なくして千葉タクシー株式会社に組織変更され設立登記を了したので、右組織変更の無効であることを主張し商法四二八条の趣旨に則り右株式会社設立無効の訴を提起した上、その代表者たる被控訴人を相手方として仮処分の申請に及んだものであり、被控訴人は右組織変更前に控訴人がその持分を他に譲渡したので組織変更後の株式会社の株主または取締役たる資格を有しないから、設立無効の訴を提起する当事者適格を有せず、従つて、これを本案とする仮処分申請は不適法であると主張した。
原審は、控訴人が組織変更当時有限会社の社員であったかどうか、組織変更に関する法律手続が履践されたか否かを審究することなく設立無効の訴の提起権者は組織変更後の株式会社の株主又は取締役に限られるところ、控訴人は右の資格を具有しないので、右の訴の原告適格がなく、従つて、本件仮処分申請人の適格もないとして、これを却下したものである。
しかし、もし、控訴人が組織変更当時有限会社千葉タクシーの社員たる地位を有していたとすれば、組織変更後の千葉タクシー株式会社において故なく株主又は取締役として遇せられていないとしても、実質上は少なくとも株主たる地位を有するものであるから、設立無効の訴を提起する適格がないと即断することはできない。
(岡部 渡辺 川上)